「ねー、グラタンどう? ちょっと濃すぎたかなあって思うんだけど」
「季沙の料理はいつもなんだってうまいよ」
「えーそうかなあ……えへへ。ありがとう」
それはいつも、俺の台詞だ。
「好きな人に褒められるとなんかうれしいねえ」
ありがとう。
傍にいてくれて。
こんなうまいメシを作ってくれて。
こんな俺を好きでいてくれて。
いつだってひとりが平気なのは、なにがあっても季沙がそこにいてくれるって、わかっているからなんだ。
「季沙」
「ん?」
「季沙がいてくれてよかった」
「ええっ? もう、なに、どうしたのこうちゃん」
「思ったこと言っただけ」
きっと、俺のほうがずっと好きだよ。
だけどそれでいいとも思っている。
好きだと、大切だと思えるものが、手を伸ばせば触れられる距離にあることが、なにより幸せだ。
俺はきっと季沙を手放せない。
心のいちばん奥、自分でも見えないほどの奥底が、どうしようもなくひりついた。



