「ただひとつだけわかってるのは、厳しいことを言うようで申し訳ないんだけど、きみたちにはまだ自分以外の誰かの人生を背負う力なんて1ミリもないということだよ」
「――特に洸介は」
いきなり名前を呼ばれてはっとする。
「こんなこと言ったら、そんなつもりない、とおまえは思うかもしれねえが……」
いつもはっきりものを言うはずのワキさんは、めずらしく少しためらってから口を開いた。
「季沙ちゃんはおまえの付属品じゃない。おまえの行く場所についていくだけの人形じゃない。季沙ちゃんには季沙ちゃんの歩く道がある。違う人間なんだから、それはどうしたって洸介と同じはありえない。――それだけは必ず、頭のなかに入れておけよ」
まるで顔面に冷水をかけられた気分だった。
だって、季沙をそんなふうに思ったことなど一度もなかった。
――本当に?
俺は当たり前のように、どこまでも季沙を連れていくつもりじゃなかったか。
なにも言わず、なんの疑問も持たず、季沙はどこまでもついてきてくれるはずだと思っていなかったか。
季沙の人生を自分のものだと、そう思ったことは、本当に一瞬たりともなかったのか?



