「ちょっと甘やかしすぎたかも」
ほっぺをぶにーとつままれる。
どこまでも伸びていくお肉を慌てて取り返し、今度はこっちが反論のターンだ。
「だってこうちゃん、いじわるしてこなかったじゃん!」
「なにが?」
「当てつけにほかの女の子とつきあったりもしなかったし!」
「ん? うん」
「わたしが意識し始めてもぐいぐい迫ってくるどころか突き放してきたし!」
だからなんだ、と言わんばかりに頭にたくさんのハテナを浮かべている。
こうちゃん、さては“幼なじみラブ”の定石を知らないな。
「漫画のヒーローはみんなそうだったの! おすすめ教えてあげるからちゃんと勉強して!」
鞄のなかからスマホを引っぱりだそうとしたところで、またもやぎゅうっと、今度はうしろから抱きしめられた。
「俺は漫画のヒーローじゃないし」
「……それは、そうだけど」
「空想の誰かじゃなくて、現実の俺だけ見てて」
たしかにこうちゃんは漫画のヒーローじゃなくて、現実のこうちゃんだけど。
ちょっと、いまのせりふは、漫画ばりのやつだったよ。
俺だけ見てて、なんて。
いきなり恥ずかしくなる。
そして、急に切なくなる。



