ゆっくり、名残惜しそうに、後を引くように、音もなく離れていったこうちゃんの顔。
いや、顔じゃなかった。
あれは……くちびる、だった。
「ひえ……」
「季沙、もういっかい言って」
「へ!?」
「俺のこと嫌い?」
こうちゃんはずるい。
甘えたように見つめられたら、わたしはもう、勝てないんだよ。
「……だい、すき」
「うん。俺も」
幼なじみ、としてじゃなくて?
きょうだいみたいな意味じゃなくて?
家族的なアレじゃなくて?
こうちゃんも、わたしを……女の子として、好き?
その答えは全部、キスで教えてくれた。
疑う余地もないほどの回答法だった。
ああ、そうか、そうだったのか、こうちゃんもわたしのこと、好きなのか。
両想いだったんだ。
そうか、知らなかったよ。
わかんないよ。
わかるわけない。
今世紀最大に安心したら、また涙がぽろぽろこぼれてきてしまった。
「季沙、誰にも触らせないで。俺以外の誰とも仲良くしないで」
落ちていくしずくたちを、こうちゃんの親指が丁寧にすくい上げてくれる。
なつかしい、やさしい手つき。
違う人に触れられたとき、この手が世界でいちばん好きだって思ったの。



