「季沙ちゃんのこと、みんなからよく聞いてるよ」
お仕事の話が終わったからか、はたまた衣美梨ちゃんと違ってわたしがガキくさいからか、浅井さんはいきなりフランクに言った。
「まさかきょう会えるなんて思ってなかったからびっくりしたけど。会ってみて、一瞬で納得した」
灰色の重たい空を見上げているというのに、その横顔はどこまでも涼しげだ。
「洸介の“無敵感”の理由、ああ、この子なんだなって」
ムテキカン?
「こんな全部を受け入れてくれそうな、どんなに疲れて帰っても顔を見るだけで癒されそうな、すべてをかけて守ってやりたくなるような。そういう存在が生まれたときから傍にいるってのは、あいつの人格にかなり影響してるだろうね」
「そんな、わたしは本当にただの幼なじみで」
もうその“幼なじみ”からも降格してしまったけれど。
だからといって、友達でもない。
だったら知人……と思ったところで泣きたくなって、考えるのをやめた。
「洸介のこと、これからもよろしく」
まだこれから仕事があるのだろう、浅井さんは腕時計にちらりと目線を落とすと、優しい笑みをこちらにむけ、挨拶がわりにそう言ったのだった。



