ノートをとっている途中、右隣から小さなメモがまわってきた。
【ID:goroxxx……】
メッセージアプリの検索用ID。
がばっと顔を上げるとすぐに目が合い、「早く検索して」と口パクとジェスチャーで伝えられる。
こういうの、ぜんぜん慣れていないから、対応に困る。
本当に男の子からモテてこなかったの。
たぶん木原くんも、最近わたしがこうちゃんといっしょにいないのをおもしろがって、からかっているだけなんだろうと思う。
それでも、非常階段ではなちゃんに言われた言葉を、思い出さずにはいられなかった。
『季沙もほかの誰かに目をむけてみたらいいんじゃない?』
『季沙がほかの誰かとくっつけば、瀬名くんも安心して“幼なじみ”に戻ってくれるんじゃない?』
そう、なのかな。
そうなのだろうか。
そうかもしれない。
わたしがほかの誰かを好きになれば、こうちゃんのことを異性として意識しなくなれば、また元通りになれるのかもしれない。
机の下、ポケットからスマホを取り出し、メモに書かれたIDを検索してみた。
2年1組の木原悟朗くん。
来週の金曜、わたしは彼と“放課後デート”をすることにした。



