いつまでたっても動こうとしないわたしに、木原くんがプッと吹きだす。
「えー。めちゃめちゃ困ってんじゃん」
「だって……急に、そんなこと言われても」
「あんなガードマンみたいな幼なじみがいてさ、相川さんっていままで彼氏とかいたことあんの?」
からかうような言い方だった。
なんだかこうちゃんのことを非難しているみたいに聞こえる。
べつに、こうちゃんはガードマンじゃないし。
単にわたしが男の子にモテないだけだし。
「なんで最近一緒にいないのか知らないけど、これを機におれのことも視界に入れてよ」
「だからあの、急にそんなこと言われても」
「来週の金曜とかどう?」
「ご、強引だなあ……」
ぜんぜん人の話聞いてくれない!
「あ、ばれた?」
木原くんは少年のような顔でニッと笑い、シャーペンのお尻のほうでわたしの鼻をツンとつついた。
「相川さんって押しに弱そうだから、つい」
じゃあよろしく、
というせりふに対してなにも言えないまま、というか言わせてくれないまま、チャイムが鳴って授業が始まってしまった。



