言われてみればたしかにそんなようなことがあった気がする。
授業前、隣の席になった男子が、教科書忘れた、やべえ、と騒いでいたんだ。
そしたら案の定、授業の中盤くらいで指名されてしまって。
初っ端から先生に目をつけられるのはあんまりだと思い、サッと見せてあげた……ような記憶がある。
あれって木原くんだったんだ。
次の授業で席替えをしてしまったし、相手のことは気にも留めていなかった。
「優しいコなんだなー、いいなーってひそかにずっと思ってたんだよね。そっか、別れたどころか、つきあってもないなら安心したわー」
人懐こい笑い方をする人だな、と思う間もなく。
「今度おれの部活がオフの日、放課後デートしない?」
畳みかけるようにそう言われ、フリーズしてしまった。
「最近、瀬名といっしょに登下校してないっしょ。知ってるよ」
痛いところを容赦なく突かれてどぎまぎした。
ちくちく、した。



