「うん?」
「元に戻れるように……がんばる、から」
とたん、はなちゃんが目の色を変えたのがわかった。
「……季沙ってなんにもわかってないんだね」
そして、とても冷たい声で言った。
はなちゃんのこの声、しゃべり方、氷点下まで下がったこの温度感、よく知っている。
よく知っているけど、むけられたことは一度もない声だった。
「それはさすがの瀬名くんでも怒るわ。『自己完結』って言われてもしょうがないんじゃない。これまでなにを見て、なにを感じて生きてきたのって疑うレベル」
音もなく立ち上がったはなちゃんが、ぱんとスカートを払った。
「じゃあ瀬名くん、わたしがもらってもいい?」
「え……」
「学祭のときにさ、ぽろっと言ったじゃん。彰人とつきあってたとき実はほかに好きな人がいた、って。あれ、瀬名くんのことなんだよね」
どこまでも続いている階段が、下から一段ずつ抜けていくような感じがした。



