グッバイ・メロディー



「季沙。始業式サボっちゃおうか」


そう言ったはなちゃんに連れ出されたのは、ひっそりとした人気(ひとけ)のない非常階段だった。

はじめての場所におろおろしているわたしとは裏腹に、彼女はどこか慣れた様子で軽快に階段をのぼっていく。


そういえば、あまり人目につかない非常階段は告白のホットスポットだと聞いたことがある。

3段先を行く美少女は、いったい何人の男子にここへ呼び出された経験があるのだろう。


いちばん上までのぼりきり、屋上へと続く扉の前で、はなちゃんはゆっくり足を止めた。

扉は施錠されており、屋上へは立ち入りできないようになっているらしい。


「で?」


最上段に腰かけながら、はなちゃんはいきなり本題に入った。


「なにがあったのか言ってみ?」


学園祭のときはなちゃんに会いに来たアキくんの気持ち、いまならものすごくよくわかる。

なんでも受け入れてくれそうな、それでいて安っぽい慰めの言葉はぜったいに吐かなさそうな顔を見ていたら、また鼻の奥が痛くなってきた。


こうちゃんを男の子として好きだと気づいてしまったこと。

だけど彼のほうにはそんな気が微塵もなさそうだということ。

わたしが変な態度を取ってしまったせいで、こうちゃんを怒らせてしまったこと。


とてもへたくそな日本語で、ゆっくりしかしゃべることができないわたしに、それでもはなちゃんはいっさいの口をはさまず最後まで聞いてくれた。


「もうそれはさ、瀬名くんにホントのこと全部言うしかなくない?」


そしてきっぱりと言った。

はなちゃんは悩みごとを相談するとなによりまず解決策を提示してくれる、頼りがいのある女の子だ。