「ん」
目の前に差しだされたのは左手だった。
「え!?」
「え?」
「なに……」
「繋がない?」
「ど、ど、どうして……?」
「いつも繋ぐから」
いつも、じゃないもん。
たまに、だもん。
だけど、たまにでも、手をつなぐのって、どうなの?
仮にも男女だよ。
もう子どもじゃないよ。
高校生だよ。
小さいころとは違うよ。
どうしていままで、そんなことも考えずにいたんだろう。
わたしの返事を待たないで、こうちゃんの左手は、ひとまわり小さい右手をいとも簡単に包みこんでしまった。
こうちゃんはどんなに寒くとも手袋をしない男の子だ。
感覚が鈍ってしまうのが好きじゃないんだって、中学生のころ言っていた気がする。
こうちゃんの手、氷点下にもなりそうな冷たい風に直接触れているというのに、すごくあったかいな。
思わずぎゅっと握り返す。
ちょっとじっとりしていてぎくっとする。
これまで気にもしていなかった手汗というものが、いきなり気になり始めてしまう。
「……こ、こうちゃん」
「ん?」
「手、ね、いっかい離してもいい?」
「なんで?」
「だってなんか……その」
手汗、
なんてワードはやっぱり言えないよ!
「……なんでもない」
こうちゃんが不思議そうに首をかしげた。
首をかしげたいのは、わたしのほうだよ。



