グッバイ・メロディー



「それでは曲紹介をお願いします」


コーナー終盤、そう言ったパーソナリティーのヒデさんに、小さな箱のなかにいるアキくんは朗らかに答えたのだった。


曲名は “Sweetie(スウィーティー)”。


愛しい人、かわいい人、
そういう意味があるんだって。


あんなにも寡黙な男子が生んだとは思えないほどポップでキュートなメロディーライン。

そしてその上に乗せられた詞は、ラブソングそのものだった。



【 育ってきた環境が違うとか
  持ってる価値観が合わないとか
  誕生日も 血液型も
  相性が良くないみたいとか

  そういう御託をあれこれ
  きれいに一列に並べたんなら
  隣どうしで一緒に
  そいつらを眺めよう

  バカみたいだって笑いながら
  ずっと一緒に眺めていよう 】



これはきっと、アキくんからみちるちゃんへのラブレター。


曲を聴きながら彼女は小さく笑っていた。

そして煙草に火をつけようとして、なにか考えると、静かにやめたのだった。


なんとなく、ラジオが終わっても、お互いなにもしゃべらなかった。

飲んじゃったから駅まで歩いて送っていこうか、とみちるちゃんが言ったのと同時に、ふたりのスマホがいっぺんに震える。


『まだみちるさんの家? 迎えにいくから一緒に帰ろう』


こんなメッセージを送ってきてくれるのは世界にひとりしかいない。


みちるちゃんのほうには、その大親友から同じような連絡がきたみたいだ。

これから行ってもいい?って。


ついさっきまであの赤い箱のなかにいた男子ふたりがインターホンを鳴らしたのは、それから1時間後のことだった。