とっぷり陽が落ちたころ、準備のために行ってしまったこうちゃんと入れ替わるようにして、制服に着替えたはなちゃんが戻ってきた。
「あんなに傷心してる彰人って見たことなかったからびっくりした」
驚くというより感心したという感じの言い方。
「女にこっぴどくふられたんだってね」
アキくんのほうが『ふられた』んだ。
そんなことも知らなくて情けない。
悩んだけど、やっぱりみちるちゃんには連絡してみた。
でも返事がくるどころか開いてすらいないようで、いまだに既読にもならない。
たまに土曜日にも仕事があると言っていたけど、そんな都合よくは、考えられない。
「ライブのときに会ったあのパンクなお姉さん? 彰人が女に遊ばれて捨てられる日がくるなんて思ってもみなかったな」
「……うん、でも、みちるちゃんはそんな人じゃないと思う」
わたしなんかには、なにもわからない。
過去も、現在も、流してきた涙のことも、ささいな毎日のことも、なにひとつとして知らない。
それでも、鍵穴のかたちをした傷痕をいまでも背中に残したままのみちるちゃんが、誰かの気持ちを軽々しく踏みにじってしまえるなんて、絶対に思えないんだ。
「わかんない、けど……でも、きっとなにか事情があると思う」
アキくんのことをそんなに好きじゃなかった、
と言われたら、もうおしまいだけど。
でもみちるちゃんは、好きじゃない誰かのこと、軽率に受け入れてしまうような人かな?



