部長さんらしき人に目くばせし、小さく会釈だけすると、はなちゃんはアキくんを連れてどこかへ行ってしまった。
中学のころ、たまに見かけたツーショットのうしろ姿。
当時のふたりがそれに重なって、なつかしいみたいな、おかしな気持ちになる。
「完全に出ていくタイミング逃したねえ……」
いまだどよめきみたいなものが残る教室に置き去りにされてしまった、もはやただのギャラリーなこうちゃんとわたし。
入り口付近でやり取りしていたから、けっこう奥のほうに座っているわたしたちに、アキくんは最後まで気づかないままだった。
「なんだか見てはいけないものを見てしまったような……。こないだからこんなのばっかりだね」
「まあいいんじゃない。たぶん、アキが目立ちすぎるだけ」
どこか機嫌がよさそうなのは、あんころ餅で糖分を摂取したおかげ、だけじゃない。
ずっと心配していたのは言わなくても伝わってきていたよ。
やっぱり男の子どうしっていいな。
こうちゃんがこんなに大切に思う“友達”を、わたしはアキくんのほかに知らない。
「ふたり、どこ行ったんだろうね」
「ライブまでに戻ってくるならどこでもいい」
わたしにできることなんてきっとなにもない。
それでも、友達を大好きなバンドのライブに誘うくらいなら、わたしにだってできるのかもしれないと思ったんだ。



