せっかくポーチを選んだのだからと、ついでにそこに入れる新しいハンドクリームまで、こうちゃんは買ってくれた。
甘くて優しいキンモクセイは、ふたりでいっしょに決めたにおい。
そろそろ帰ろうかと駅に向かっていた足をこうちゃんがいきなり止めたのは、そのすぐあとのことだった。
「どしたの?」
じっと一点を見つめる視線をたどっていく。
目に飛び込んできたのは、見覚えのある金色の髪。
そしてその横に、とても幸せそうに笑う、ぜんぜん知らない女の子。
アキくんは特定の彼女がいるときにはぜったい遊び歩かない男の子だ。
だからあれはきっと“浮気”じゃない。
あれは……たぶん、そう、考えたくないけど。
「帰ろう、季沙」
「でも」
「俺たちに関係ない」
そうかもしれないけど。
たしかに、アキくんとみちるちゃんがつきあい始めたことすら知らなかったわたしが、ずけずけと口出しできるようなことじゃないかもしれないけど。
それにしたってあんまりだよ。
関係ない、なんて。
そんな冷たい言い方しなくてもいいじゃんか。



