「季沙」
教室のうしろのドアにやってきた背の高い影が、静かにわたしの名前を呼んだ。
こうして見るとこうちゃんって本当にふつうの男子高校生だ。
ちょっと無口で、ちょっと人見知りで、あと、ほんのちょっとかっこいいだけで。
こないだカーモのフェスにうっかり出演したんだよって、こうちゃんの正体を知らない人に言っても、そう簡単には信じてもらえないだろうな。
「迎えに来てくれてありがとう」
「ん、帰ろ」
こうちゃんがペコリと頭を下げると、はなちゃんもひらひらと手を振って答えた。
「はなちゃんがね、楽しんどいでーって」
「うん」
「お菓子いっぱいくれたよ。こうちゃんといっしょに食べてーだって」
紙袋のいちばん上にあるチョコレートの箱を見て、ななめ上にある頭の周りにぽわぽわとお花が飛んだ。
「生野さんはほんとにいい人」
甘いものをくれるかどうかで人の善し悪しを決めるのは、ちょっと考えものだと思うけどね。



