「タトゥー、消さない、ですか」
情けないカタコトのしゃべり方になってしまった。
それでも、喉をぐんぐん押し上げ、こみ上げてくるものを、どうにも抑えきれなかった。
傷痕に太い指を這わせ、脇坂さんはそっと笑んだ。
あの目だ。
さみしく、切なく、どこまでもやさしい。
もう終わった物語を思い返す人だけが浮かべる、胸を締めつけられるような瞳の色。
「消したところで、結局消えないからな、なんにも」
洸介が心配するから早く戻ってこいよ、とわたしの頭をひと撫でし、脇坂さんはあっけなく行ってしまった。
ひとりで生きていけそうな、あまりにも強い背中。
たぶん、決してふり返ってくれない、孤独な背中。
あのうしろ姿を見送ったみちるちゃんの気持ちを想像したら、悲しくて、苦しくて、どうしようもなくなってしまった。
だって、きっとわたしでも同じ選択をすると思ったの。
いつか見失ってしまうくらいなら、いっそ自分から手を離そうって。
ひとりで道を引き返せるうちに戻っておこうって。
わたしはずっと、こうちゃんの背中を見失わないでいられるかな?
勝手についていっているだけのわたしは、どんどん進んでいくこうちゃんのスピードに、いつかふり払われてしまわないかな?



