グッバイ・メロディー



脇坂さんと、みちるちゃん。

かつて恋人どうしだったのは、ふたりのほうだったんだ。


そしてたぶん、関谷さんの話の通りなら、脇坂さんが東京に出てきたのが原因でダメになってしまったということだ。


「ごめん、いまのはちょっと忘れてもらえない?」

「そんな……」

「うん、そうだよな、ごめん、でも季沙嬢、瀬名少年も、知らんぷりして黙ってることくらいはできるだろ」


テーブルのいちばん端っこ、楽しそうに談笑しているアキくんとみちるちゃんに目くばせをして、関谷さんは「頼むよ」と言った。


「世の中には知らないほうがいいことが、けっこうたくさんある」


そうだ。

アキくんは、知らないのかな。

知らないだろうな。

脇坂さんも、みちるちゃんも、過去の話はほとんどしない人だから。


昔のこと、ふたりがもう少し若かったという時代のこと、どうしてあまり話題にしないんだろうって、少し不思議に思っていたの。


もしかしたら、話さないんじゃなく、話せないのかもしれない。

軽々しく口にできてしまえるほど、簡単なものではなかったのかもしれない。


それは、わたしなんかにはぜんぜん想像もできないようなことで。


「ちょっと、お手洗い……いってきます」


頭に隕石でも落ちてきたんじゃないかというくらいの衝撃。

こんなとんでもない秘密を抱えて、ホテルに帰ってから、みちるちゃんや衣美梨ちゃんとふつうに話せるかな?