「そう、ずっと、いまのきみらよりもう少し若いころから、真二とやってたんだ。そんで、もういまとなっては昔話だけど、若かったころのおれはずっと真二とやってくと思ってた」
それは本当に“昔話”なのだと思った。
そういう顔だった。
終わった物語を話す人の目は、とてもさみしくて、切なくて、この世でいちばんやさしい色をしている。
関谷さんにとって脇坂さんがどれほど大切な存在だったのか、多くは語ってくれなくとも、この瞳を見ればわかってしまう気がした。
「みちるちゃんとは」
言いかけて、はっとして、両手で口を覆った。
きっと、ぜったい踏み入ってはいけない場所。
わかっていたのに、あんまり自然に話してくれるから、ついつい気が緩んでしまった。
「なんだ、それは知ってるんだ?」
ゆるいパーマの前髪のむこう、少年のような目がおもしろそうにきゅっと細くなる。
「そうだな、あのとき一瞬でも東京に出てきてなかったら、たぶん別れてなかったと思うけど」
「や、やっぱり……」
「――真二とミチのことだろ?」
ひゅっ、と喉が変な音を出した。
もうほとんど寝かけていたはずのこうちゃんも、反対側の隣でばちっと目を開いた。
わたしとこうちゃんの顔を交互に見た関谷さんがまばたきをくり返す。
そしてうなだれたように「あー」と声を出すと、本当に苦い顔をして笑ったのだった。
「……もしかしておれ、やっちゃった?」



