グッバイ・メロディー



「こうちゃんのせいだもん」

「うん、ごめん」

「なんで素直に謝るのー!」

「季沙が怒ってるから」


ぶにーとほっぺたをつままれる。

自分でも嫌になるくらいよく伸びる、肉団子みたいなほっぺ。


「それでも来てくれてありがとう」


来るに、決まってるじゃんか。

こうちゃんのステージ、いっこでも見ないまま死んでしまったら、わたしは未練たらたらで成仏できないと思うもの。


だけどこれからみんながもっともっと大きくなって、全国ツアーなんかを組むようになったら、全部通うというのはなかなかむずかしくなるのかもしれない。

ステージに立つこうちゃん、
そのすべてを、わたしは届けることができなくなるのかもしれない。


「きょうもいちばんかっこよかった」


どうにもぶーたれた声になってしまった。


それでもこうちゃんは満足そうにうなずいてくれる。

そしてこてんとわたしの肩に頭を乗っけてくる。


もふもふの髪、仕方ないからきょうも、撫でてあげる。


「お疲れさま」


やっと言えた。


「ん、ありがと、疲れた」

「暑かったもんねえ」

「でも楽しかった」


わたしも楽しかったよ。

たくさんはしゃいじゃった。

いろいろステージを見ていたら、知らなかったアーティストの曲を好きになった。


それでもやっぱり、あまいたまごやきがいちばんだって思う。


「こうちゃん。こんなところにまで連れてきてくれて、ありがとう」


本当はこうちゃんが連れてきてくれているわけじゃなく、わたしが勝手についてきているだけだということは、わかっている。

でも、そうとわかっていても、これはこうちゃんがいなかったら見えなかった景色だから。


だから、連れてきてもらっている。


こうちゃんがどんなふうに思っても、わたしはそう思って、これからも勝手についていくね。