「そう、ごめんね、若いころの産物なんだよ」
そして困ったように笑って言った。
「ほんとねー、こういうの絶対やめたほうがいいよ。いざってときにやっぱり簡単には消せないからね」
「消したい、の?」
思わず口をついて出た質問に、きれいな顔は目を逸らして笑うと、小さくうなずいた。
「そりゃ……ね。プールとか、温泉とか、行けないじゃんね?」
みちるちゃんはいつも笑っているし、軽口ばかり叩くから、けっこう掴みどころがないなと思うけど。
他愛ない嘘をつくとき、なにか誤魔化すときだけは、絶対に人の目を見て話さないね。
「あ、ほら、もう次だよ! なににするかちゃんと決めた?」
みちるちゃんの華奢な肩甲骨についた、鍵穴の形をした傷。
そこにはきっとなにか、ささいじゃない物語があるんだって思った。
わたしが知る由もない“若いころ”。
笑ってばかりのその頬を、どうしようもなく、涙が濡らすこともあったのかな。
いったいどんな恋をして、なにに傷ついて、なにを守って、こんなにかっこいいお姉さんになったんだろう。
みちるちゃんのいちばん大切なものって、いったいなんだろう。



