「ていうかもう10月なのに暑すぎ! 地球、大丈夫なの?」
ゾンビみたいなものがプリントされたTシャツの胸のあたりを扇ぎながら、みちるちゃんが太陽にむかって文句を言う。
『炎天下はご勘弁!』とタイトルのつけられたこのフェス、
文字通り夏にめっきり弱く、とてもじゃないけど炎天下でライブなんかできないという関谷さんが、この時期の開催を決めているらしいけど、最近の夏は長引くことが多いから意味ないな。
会場の真ん中あたりにずらりとならんだ屋台は、冷たいものを売っているワゴンがやはり繁盛していて、げんなりしながらもジェラート屋さんの最後尾にならんだ。
「ぜんぜん、しっかりやれてたね。ぶっちゃけ想像を遥かに超えてたよ」
メニュー表を人差し指と中指にぺらりと挟んだみちるちゃんが、うれしそうに笑ってこっちをふり向いた。
「もう、メチャクチャ感動しました……」
「ほんと、衣美梨は初っ端からぶっ飛ばして号泣してたもんねー」
まだ少し涙ぐんでいる衣美梨ちゃんの丁寧に編みこまれた髪を、ゴツいリングだらけの手がぽすぽす撫でる。
「あのコたち、大きくなるね。昔からワキとマコちゃんの目に狂いはないんだよなあ」
言いながら前を向いてしまったみちるちゃんの顔、いきなり見えなくなってしまって、なぜだかどうにも急激に不安になった。



