「ファンクラブ、立ち上げてよかったです……!」
「こら、まだ始まってもないのに泣いちゃダメじゃーん」
みちるちゃんが笑いながら、いつもより気合の入ったリングだらけの指を伸ばして細い肩を抱き寄せた。
「そんなふうに言ってもらえてあたしらもうれしいよ。きょうは楽しもうね」
お姉さんが双子のようにそっくりなふたり組にそう告げると、彼女たちもキラキラの笑顔でうなずいてくれた。
地元から遠く離れた東京で、こんな人ごみのなかで、こうして繋がる出会いがあること、かけがえのない奇跡みたいに思えてならない。
こんなにすごいことがあったんだよって、早く会って、話がしたい。
こうちゃん、どきどきが止まらないよ!
「ああ、どうしよう、緊張する……」
「季沙が緊張してどーすんの」
「だってみんながこんなステージに立つなんていまだに信じられなくて」
こうちゃんが東京にむけて出発したのはきのうのお昼ごろだった。
金曜日だから当たり前に授業はあるのに、わざわざトシくんといっしょに学校を早退して、わたしに『いってきます』のメッセージだけ残して、彼は先に行ってしまった。
ちなみにあまいたまごやきの4人と彼らの大切な機材を、ハイエースにまるごと乗せて東京まで運んでくれたのは脇坂さんだ。
地元のボスは、関谷マコトさんとそのバンドメンバーの顔なじみなので、きょうのフェスでは裏方にまわっているらしい。



