「みちるちゃんはフェスみたいなのって、けっこう来たりするの?」
見慣れない景色にどうにもそわそわしながら訊ねる。
「ううん、ぜーんぜん。あたしはこういう開放的なのより、ちっちゃいハコみたいな閉鎖的な空間のほうが好きなんだよねえ」
彼女のその好みはなんとなく理解できる気がしたのでうなずいた。
みちるちゃんは、突き抜ける青空の下、というより、殴られるみたいな音が反響するライブハウス、の感じがする。
「フェスは、若かりしマコちゃんが最初に出演したのと、このフェスの記念すべき初回と、その2回だけ。マコちゃんはハコでやるより野外でやるのが好きみたいだけどねー」
遠くのお客さんまで見渡せるからいいんだって、とみちるちゃんは付け足した。
「それを言われたとき、ああ、ほんとに大きくなっちゃったんだなあって思ったよ。マコちゃんの音楽が大好きだからホントにうれしかったんだけど、同じくらいね、どっかでさみしくて。もう別世界の人になっちゃったんだ、って思わずにいられなくってさ」
胸のどこか、自分でもわからないような深い場所が、鈍いみたいな痛みをもって疼く。
みちるちゃんの言うその感覚なら知っている気がした。
気がするんじゃない、とても、覚えのあるものだ。



