今夜のごはんを、ふたり分で作るのか3人分で作るのか、さんざん悩みぬいた。
もしかしたらそのまま、アキくんがヒロくんを連れ帰るんじゃないかと思ったの。
まあもし余っても清枝ちゃんに食べてもらえばいいか、という自己解決をして、結局チンジャオロースは3人前で作った。
何時に帰ってくるかわからなかったので夕食の準備を早めに済ませ、自室に戻って本日分の宿題をやっつけている真っ最中に、その連絡はあったのだった。
「もしもし、季沙?」
わたしのスマホにトシくんから電話がかかってくるなんて史上初のことだ。
「どうしたの?」
バンド(というか兄弟)の状況が状況なわけで、心配もしていたところに、思いがけない人からの着信。
声がうわずらないわけがない。
なにか重要な問題が起きたのかもしれないと、勘ぐってしまう。
「ごめん、急なんだけど、ちょっと洸介のこと迎えに来てもらえないかな」
「えっ。こうちゃん……どうしたの? なにかあった?」
予想していなかった言葉に焦った。
アキくんでもヒロくんでもなく、こうちゃん?
「いや、このままじゃ帰れそうになくて」
「ええっ?」
「アキもヒロも洸介のこと離さないんだよ。引っぺがして連れて帰れるの、季沙しかいないと思って。ごめんな」
いったいどういうことなのかわけもわからないまま、部屋着のTシャツから着替えるのも忘れて家を飛び出し、みんながいるという脇坂さんのお店へ向かった。



