「高校、行くつもりないって言いました」
への字に結ばれたくちびるがふっとほどけたかと思ったら、信じられない言葉をこぼした。
頭の良いヒロくんならどこの高校にだってびゅんと合格できちゃうだろうに、またどうして?
もったいないよ、と言おうとしたところで、もしかしたらアキくんやご両親に同じようなことを言われたのかも、と思い直す。
「行かなきゃダメな理由、ぜんぜんわかんねえ。べつに高校行ってやりたいこともないし」
「ヒロのやりたいことってなに?」
こうちゃんがシンプルに訊ねた。
「バンド」
ヒロくんはもっとシンプルに答えた。
「じゃ、いいんじゃない。べつに無理して行くようなとこでもないと思う。俺も中3のとき進学するか悩んだし」
「ええっ! なにそれ。ぜんぜん知らなかったよ!」
初耳の爆弾発言に思わず反応してしまうと、眠たそうな目がゆっくりとこっちを見た。
「誰にも言ってない。季沙が受験したから俺もしたけど、ぎりぎりまで迷ってた」
受験期になにか話し合うようなことはなかったけど、こうちゃんがわたしと同じ高校を受けたのは、単に自分で選ぶのが面倒だっただけなんだな。
こういうことがあるから何回だって思ってしまうのだ。
こうちゃんってちょっとへんてこりんな男の子だ、って。



