グッバイ・メロディー



そういえば、ヒロくんとゆっくり話をしたことって、これまでに一度もなかった気がする。


黙々とマフィンを口へ運ぶ姿はやっぱりどこかむすっとしていて、好きな味なのかどうかさえわからない。

こうちゃんもよけいなことを言わない男の子だけど、すごくおいしく食べてくれているのは見たらわかるし、寡黙なところがよく似ていてもふたりはぜんぜん違っているんだ。


ひと目で全部わかってしまうというのは、ただ単に、わたしとこうちゃんのいっしょに過ごした年数のおかげかもしれないけど。


「どうしてこうちゃんのところに来たの?」


ふと浮かんだ疑問を投げかけると、ヒロくんはネコのようにくりくりとしたつり目を持ち上げ、じっとわたしを見た。


吸いこまれそうにきれいな瞳。

色素の薄いこの目は、これからどんなものを吸収しながら、どんな色に染まっていくんだろう?


「いちばんなんも言わずに受け入れてくれそうだったから」


ヒロくんは小さな声で言った。


「甘やかしてくれる、とかじゃなくて。洸介さんは、理論武装して、頭ごなしに叱らない人だと思ったから」


子どもみたいな、ぷいとすねた目。

いつも冷静沈着で、実年齢よりうんと大人っぽいヒロくんだけど、やっぱりまだ中学生、15歳という微妙な年齢なんだって、こういう顔を見ると実感する。