グッバイ・メロディー



マフィンをお皿に移して部屋まで持っていくと、これまたヒロくんがとてもうやうやしくお礼を言ってくれて感心してしまった。

やっぱりこういうところ、ものすごくちゃんとしている。


「なあ……それ、いつも使ってるんですか」


そして、まわりのことを実はかなりよく見ている。

目ざとくわたしたちの手元に落とされた視線は、なんともいえない色をしていた。


「あ、違うの! これはいつも使ってるんじゃなくてさっきおろしたてのホヤホヤで」

「え、最近ふたりで買ったんですか」

「ああっ、そうじゃなくて清枝ちゃん……こうちゃんのママとパパのやつで」


ふうん、と、ヒロくんはちょっと苦い顔をして唸った。


夫婦、ましてや恋人どうしでもなんでもない男女がペアのマグカップをふつうに使ってしまうなんて、ヒロくん的には絶対に許されないことなのかもしれない。

そういう神経質な、ちょっと潔癖みたいな部分、端々でたまに感じる。


アキくんとぜんぜん違う、目元ぎりぎりで切りそろえられた黒い直毛。

その下からのぞいている、アキくんとよく似た目は、いつも世界をどんなふうに映しているんだろう。