瀬名家には必要最低限のカップしかないので、なにを使おうか困っていたら、こうちゃんが戸棚の奥のほうからかわいらしい箱を取り出してきてくれた。
新品未使用のペアマグカップは、直おじちゃんと清枝ちゃんが結婚したときに友人夫婦が贈ってくれたお祝いだという。
使わないで取っておいてるらしいけどきっと忘れてる、とこうちゃんは言った。
だからいっしょに使おう、と。
直おじちゃんと清枝ちゃんは、本当に仲の良い夫婦だった。
お互いのことが大好きで、結婚したのはとても自然なことだったんだろうなって、幼いながらにすごく憧れていたくらい。
「こんな大切なもの使っちゃって、清枝ちゃんに怒られないかな?」
「むしろ思い出して懐かしがって喜ぶんじゃない」
「えーそうかな。それにしてもこうちゃん、よくこれのこと知ってたね」
「小さいころ父さんに教えてもらった。絶対忘れてるって言ってた」
こうちゃんっていろんなことを本当によく覚えているけど、きっとそれは直おじちゃんの遺伝子を受け継いでいるんだな。
ふたつくっつけると腕を組む形になっているそれの、タキシードのほうにこうちゃんの分を、ドレスのほうにわたしの分のカフェオレをいれる。
ヒロくんの分はいつもこうちゃんが使ってる黒いマグカップにいれた。



