「ヒロくん」
イヤホンを装着したままの家出少年にダメもとで話しかけてみると、意外にも声は届いたようで、彼ははっとしたように顔を上げてわたしを見た。
「……ちわ。急に、すみません」
まさか謝られるとは思わず、びっくりした。
ヒロくんってこう見えて、こういうところが本当にしっかりしている子だよな、と思う。
べつに、わたしに謝るようなことなんてひとつもないのに。
きっと今回も、ヒロくんにとってなにか重大な問題があっての決断なんだろう。
わけもなく家を飛び出したりするような男の子じゃないよ。
こうちゃんもそれをわかっているから、深く追求したりせず、気の済むまで好きにさせてあげようとしているのかもしれないな。
「あのね、きょうすごくおいしいカフェに行ってきたんだけど、お土産にマフィン買ってきたからヒロくんもいっしょに食べない?」
その話題に先に食いついてきたのはこうちゃんだった。
ウチの甘党大魔神さんがたくさん食べるだろうと思って、念のために4つ買ってきておいてよかった。



