「お待たせしてごめんなさいっ」
そこに、この世のものとは思えないほどきれいな、透き通った声が落っこちてきた。
ついでに漂ってきたお花のような香りに誘われるみたいに顔を上げると、きょうもお上品で可憐な衣美梨ちゃんが、ピンクゴールドの腕時計に目を落としているところだった。
「いーえ。ぜんぜん待ってないから大丈夫」
自然で完璧な返事と、見とれちゃうくらいかっこいい笑顔。
あんなにモテモテのアキくんがみちるちゃんに恋をしてしまったのがものすごく納得できて、勝手に共感してしまう。
いくつものリングで守られている手が、しなやかな真っ白の手にメニューを渡した。
隠れ家みたいなおしゃれなカフェは衣美梨ちゃん指定の集合場所だ。
お願いしたいことがあるので休日を貰えませんか、
とメッセージが来たのは、こうちゃんといっしょに金曜夜9時からの映画タイムを楽しんでいる真っ最中だった。
「で、あたしらにお願いってなに?」
3人分の飲みものがそろったところで、いきなりみちるちゃんが本題に入る。
お上品な顔に少しの緊張が走ったのがわかった。
こんな顔をされたら思わず身構えちゃうよ!
もしかして、トシくんのことでなにかあるのかな……?



