「なんとなく……です」
黙ってやり過ごすことをいよいよあきらめたこうちゃんは、いつも通りの返事を、いつもよりだいぶ居心地悪そうに、もごもごと言っただけだった。
「ほんとに、なんとなく思いたって。俺はギターしか弾けないし、これといってほかにやりたいこともなかったし」
少し考えたあとで、こうちゃんは否応なく自分の声を伝播していくスタンドマイクに少し戸惑いつつ、ぽつりぽつり、ひとつずつ言葉を落としはじめた。
正直、息をのむほど驚いた。
本当にね、呼吸をするのも忘れるくらい、真剣に聞き入ってしまったよ。
「ひとりで弾いてるのもそれなりに楽しかったけど、アキがいて、ヒロがいて、トシに会って、せっかくこんな上手いやつらが周りにいんのに、ひとりでやってんのももったいないかなって。それで、バンドやるのもおもしろそうかなって思っただけ」
困ったときにこうちゃんがいつもする癖。
くちびるをぐっと内側に巻きこみ、ななめ下をじっと見つめると、寡黙なギタリストは再び口を開いたのだった。
クールな顔がふっと上がる。
白い照明が、こうちゃんのことをまっすぐ照らしている。
「けど、3人がいたから、俺はいまこんな場所にいるんだと思ってる。3人だけじゃなくて、ここにいる全員のおかげで、俺は好きなことを好きにやれてる。いつも誰かのおかげだって思う。俺はひとりじゃなにもできなかった」
だからありがとう、
と、なんの曇りもなく続けた。



