「でさ、けっこうびっくりなのが、たぶん知らない顔もいっぱい見えてて」
目くばせされたギタリストはなにも言わず、瞳だけ動かして会場を見渡すと、うん、と小さくうなずいたのだった。
「おおさかっ!」
いきなり、こちら側にいた誰かが叫ぶ。
「え? なに?」
「ウチ大阪から来た!」
「マジで? 嘘っしょ?」
「まじー!」
会場の真ん中あたり、黒のツインテールがぴょんぴょん跳ねているのが視界の端に入った。
アキくんがさすがに驚きを隠せないというふうに、目を見張りながら息を漏らして笑っている。
すげえ、
と、ひとりごとみたいな言葉がマイクを通して届いてきた。
体のいちばん真ん中がびりびりとして、やがてそのしびれが全身に広がって、隅々まで、末端まで、誰かに全部を奪われていくような。
少しだけ怖くて、だけどどうにも心地いい感覚は、知らないうちに涙腺をぐんぐん緩めていった。
「大阪だって。すごいね。ほんとにすごいよ、みんなすごいなあ」
わたしの泣き顔を見て笑ったはなちゃんが、ささやくように言った。
きれいな指先がそっと抱き寄せてくれる。
やさしいにおいがする。



