グッバイ・メロディー



それと、ほぼ同時くらい。


イギリスのロックバンドが80年代にリリースしたナンバー。

そんな、ちょっとレトロでお洒落なSEが、なんの前触れもなくいきなり鳴りやんだのだった。


「あ、始まるよっ」


突然のことに困惑しているはなちゃんの手を引き、人をかき分けてぐんぐん進んでいく。


途中で照明がふっと落ちる。

誰かが悲鳴のような声を上げる。


その声に重なるように、4人分の足音がかすかに聴こえてきた。



「――こうちゃん!」



最初にエレキギターが高らかに鳴いた。

スネアが8ビートを刻み始めた。

足元からベースの低音が響いてきた。


そして、きらきらと光を帯びた歌声が全員の頭上に降り注ぐころ、小さなライブハウスはすでにぐらぐらと揺れていたのだった。


200人が一斉にジャンプすると建物は簡単に揺れる。

この振動がこんなに心地いいなんて、ほんの1年前まではぜんぜん知らなかったよ。


たたみかけるように3曲、いっきにやると、不動のフロントマンは金色に輝く毛先を軽快に揺らしながら右手を上げた。


「こんばんはー!」


顔じゅういっぱいの笑みがいつもの100倍くらい眩しい。


「すげえ! 3曲もやったのにまだぜんぜん終わらねえ! 体力もつかな?」


トシくんがくすくす笑っている。


その手に持っているのはベース……に、違いないのだけど、これまでのとは、違うコだ。

脇坂さんから直々に譲り受けたというその新しい相棒は、やっぱりどこか特別な感じがした。


お医者さんの実家を飛び出し、トシくんはいま、ベーシストの師匠みたいなボスのおうちで暮らしているらしい。


「来てくれてありがとうございます! まだまだやるんで好きに楽しんでってくださーい!」


長々とMCをしないのは対バンのときと変わらないな。

アキくん以外に誰もしゃべらなかった30秒くらいを挟むと、再びエレ吉くんが最初の一音をかき鳴らしたのだった。