グッバイ・メロディー



「こんな感じなんだね。すごーい!」


すでに数人からナンパされ済みの正統派美少女が、ドリンクを片手にきょろきょろとあたりを見渡した。

顎のラインで切りそろえられた真っ黒のボブが照明に当てられてつやつやと輝いている。


「ていうか、けっこう人いっぱいだね」

「ねー、わたしもびっくりしちゃった」


ミスターグリッターのキャパは200人。

まさかそれが、ほとんどぎゅうぎゅうになってしまうなんて。


対バンではあまり見たことのないお客さんもけっこういるみたいだった。

SNSで拡散された動画を見たり、CDやラジオを聴いたりして、わざわざ来てくれた人も少なくないのかもしれない。


そして、こんな田舎の街に似合わないような、ちょっとオーラのある風格のお兄さんたちは、みんな脇坂さんの知り合いなのだとみちるちゃんから聞いている。


「ほーんと。中学のころはこんなになっちゃうなんて思いもしなかったなあ」


とてもしみじみと言うから、つられてこっちまで感慨深い気持ちになってしまった。


「彰人が有名になったら『昔つきあってたんだ』って武勇伝にしちゃおっかな」


ジョーダンだけど、とおどけつつ、大きな目がふっと前方に視線をむける。

機材のみ置かれた空っぽのステージは、埃や熱気で白っぽく霧がかっている。


「不思議だね。一回なにかが始まると、こんなふうにいっきに駆け足で上ってっちゃうんだね」


はなちゃんがとてもうれしそうに、そしてしんみりと、そう言った。