「こうちゃんってほんっとーによく覚えてるね!」
「それがはじめてだったから。ずっと忘れない」
言われて、はっとして、じーんとした。
いままで考えたこともなかったけど、何事にも“はじめて”はあったんだよね。
こうちゃんとわたし、これまで気が遠くなるほどに多くの毎秒をいっしょに過ごして、当たり前みたいにいくつもの日常を作り上げてきたけれど。
そう、きっと、わたしたちがはじめて会った日、なんてのもあったわけで。
お母さんのお腹のなかにいたころ、そして生まれてから少しの時間、わたしはこうちゃんのことを知らなかったんだ。
生まれる前からずっと知っていたような気がするのになんだか変な感じだ。
赤ちゃんのとき、こうちゃんという生きものにはじめて対峙したわたしは、どんなことを感じたんだろう。
こうちゃんはどんな顔をしてくれていたんだろう。
幼なじみってお得なことがいっぱいあると思っていたけど、出会いの瞬間が記憶に残らないという点だけは、ほんのちょっと残念だね。
「フルーシェ久しぶりに食べたくなってきたあ」
「俺も」
「じゃああした帰りに買ってきていっしょに作る?」
「うん」
世界中にあふれている日常は、きっとたくさんの人が偶然に築き上げてきた“はじめて”の集合体。
わたしが大好きなバンドだって、同じようにそうなんだ。
だから、はじめてを重ねているうちにいつしか当たり前の日常に変わっていた4人の光景を、簡単に手放したくないってどうにも思ってしまった。
4人が同じ街に生まれて、こうして偶然のうちに出会えたこと、そんなものすごい奇跡を、もっと大切にしたい。
こうちゃんが大切にしているものを、わたしも同じぬくもりで、優しい強さで、抱きしめていたい。



