「こうちゃんの優しいとこ、みんなに誤解されたままじゃ嫌だよ」
わたしのお腹の前で組まれているこうちゃんの指が、彼の意思とは別物みたいな感じにぴくりと小さく動く。
「トシくんに『やめてもいい』って言ったの、100パーセントほんとの気持ちだった?」
全部が嘘の気持ちじゃないということ、ちゃんとわかっている。
トシくんのことを考えているからこそ、大切に思っているからこそ、ああいうふうに言ったんだってこと、わたしはわかっているよ。
こうちゃんはそういう優しさの使い方をする男の子だから。
「たしかに、トシくんのおうちのことだし、お医者さんとか後継ぎとか、足掻いたってどうしようもないことなのかもしれないけど……」
ふと、思い出す。
こうちゃんの誕生日にアコギを運んできてくれた清枝ちゃんのこと、トシくんは『うらやましい』と言ったんだ。
そうだよ。
覚えている。
あの日、トシくんの親御さんはどんな人なんだろうと、ぼんやり考えた。
きっと優しくて穏やかで品がよくて、素敵なご両親なんだろうって、勝手に想像した。
いつも自分のことはしゃべらないで、みんなの話を聞いてニコニコ笑っているお兄ちゃんは、いままでどんな想いでベースを手に取っていたのだろう?



