「嫌だから、話し合ってくる」
すでに拭うのなんて追いつかないくらいボロボロに泣いているわたしの両頬を、今度は両手で包みこみ、こうちゃんが涙の粒をひとつずつすくいあげていった。
とても、大きな手。
丁寧で優しい手つき。
「こうちゃん、トシくんのこと止めるの?」
「決めてない。トシの話を聞きたい」
あいまいな答え。
嫌だよ。
なにがなんでも止めるんだって、いまここで誓ってほしかったよ。
だけどこうちゃんがそういうことをしない人だということ、いちばんよく知っているのはわたしだ。
「季沙も一緒に行く?」
わたしが行ったってきっとなんの意味もない。
そう思って答えあぐねていたら、こうちゃんはわたしの前髪をさらりと持ち上げ、伺うみたいに顔を覗きこんできた。
「季沙も一緒に来て」
うなずくかわりに、目の前にある大きな手に触れてみる。
きゅっと握ると、こうちゃんも同じ強さで握り返してくれた。
「行く」
わたしが行ったって、なんの意味もないとしても。
とても、知らん顔はできないよ。
ただこうちゃんの帰りを待つだけなんて、そのあいだ泣きすぎて、水分不足で死んでしまうかもしれない。



