グッバイ・メロディー



こうちゃん、いったい誰となんの話をしているんだろう。


お仕事のことかな?

そうだとすると相手はメンバーの誰かか、あの名刺の“浅井さん”あたりかな?


それともぜんぜん、別な話かも。


通話相手は女の子だったりして。

こうちゃん、そういうのまったく興味ないって顔しといて、わたしの見えないところでうっかりちゃっかりしっかり女の子と!


そこまで考えたところで、黒いスマホを耳に押し当てたままのこうちゃんと、ガラス越しに目が合った。


同時にその口元が少し笑う。

目元は、ちょっとあきれている。


心のなかぜんぶ見透かされたみたいでぎくっとしてしまう。


電話のむこうの相手になにか伝え、画面をタップすると、こうちゃんはおもむろにこっちにやってきた。


「盗み聞き?」


顔を見るなり、笑いながら言う。


「聞こえてないもんっ」

「じゃあ聞こえてたらばっちり聞いてたってこと」


それは図星はなはだしいので口答えできない。

いつも優しいくせに、たまにこんないじわるを言われると、変な汗がどばっと出てしまうよ。