その連絡があったのは、そんなふうに勝手に胸をふくらませていた、つい矢先のことだった。
「ちょっと電話」
ぶるると震えたスマホの画面を確認するなり一瞬だけ変なふうに眉をしかめたこうちゃんが、めずらしくそんなことを言ってベランダに出ようとした。
こうちゃんは、誰とどんな通話をするときでも、わたしがいたとしても、なんにも気にしないで、ギターを手放さないままチャッチャとスピーカーホンにしてしまうから、その反応はとても違和感があった。
一般的には普段のこうちゃんのほうが、絶対的にヘンテコなのだろうけど。
「わたしが席外してるからいいよ?」
「いい、俺が出るから季沙はここにいて」
自分の部屋なのに自分が出ていっちゃうなんて。
こんなにささいなことにもこうちゃんの優しさと過保護さと甘さを感じて、おとなしく待っていることにしても、やっぱり1分ももたないの。
どうにも窓の外のことが気になってしまい、気づかれないようこっそりレースカーテンの隙間から覗き見てみる。
その横顔は、べつだん怒ったり、悲しんだり、焦燥したりしているわけでもなく、いたって普段通りのポーカーフェイスといった感じで、拍子抜けした。
そして同時にもやもやと、もっと大きな疑念が胸に広がっていく。



