「泣いてもいいんだよ?」
「季沙の前では泣かない」
「なんで」
「かっこ悪いから」
「かっこ悪いの?」
「うん」
そんなふうに思うわけないのに。
世界でいちばん大切な男の子を泣かせてあげられないわたしのほうが、よっぽどかっこ悪いよ。
そう思ったらこっちがめそめそしてきてしまって、すぐ近くにあるこうちゃんの耳の裏にまぶたをくっつけていると、やがてじんわり濡らしてしまった。
それに気づいてがばっと顔を上げたこうちゃんが、わたしの顔を覗きこむ。
驚いたような、心配しているような、だけどからかうみたいにちょっと笑っている、いじわるな顔。
昔から泣き虫すぎるわたしを誰よりもよく知っているから、こういうときの対応はお手のものだ。
こうちゃんの親指がわたしの目尻を触って、涙のしずくを拾い上げた。
「なんで季沙が泣くの」
嬉しいと楽しいとおめでとうとありがとうがいっぱいの、こうちゃんの誕生日。
清枝ちゃんからのまさかのプレゼントに感動して、わたしのほうが泣いちゃうくらい幸せなのに、こうちゃんはやっぱりきょうも泣いてくれなくて、悲しいような、さみしいような、情けないような気持ちになって。
睡眠が足りていないと情緒が不安定になってしまうんだね。
こんなことなら、アキくんとヒロくんといっしょにわたしも寝落ちしておけばよかった。
うそ。
こんなにも幸福な時間をいっしょに過ごせて、本当によかった。



