「もういいから早く食べたい」
子どもみたいなせりふを子どもみたいに言ったのを聞いて、めずらしく声を上げて笑ったトシくんが、長い腕を伸ばして、まだ丸いままのケーキをこうちゃんの前にずいっと差し出した。
「わかったから好きなだけ食えばいいよ」
そうやって甘やかすとこうちゃんは本当にひとりでホールごといっちゃうんだよ!
そんな心配などよそに、黙々とケーキを頬張り始めたこうちゃんを、トシくんはとても優しい目で眺めている。
そんな、「ほんとにしょうがないな」って言っているみたいな顔をされたら、わたしなんかは黙るしかなくなってしまう。
たぶん大げさじゃなく、トシくんの半分は優しさでできているはず。
デザートをひとりじめされてぶうぶう言っているアキくんをうまくなだめるのも、放っておいたら端っこでゲームし始めちゃうヒロくんをさりげなく会話に参加させるのも、きっと、トシくんにしかできない芸当だ。



