「おい季沙。ぼけっとしてねえで早く切り分けろ!」
いきなりのことに思わず焦ったら、間髪入れず、アキくんの後頭部をこうちゃんの右手がスパーンと叩いた。
びっくりした。
「誰が季沙に命令していいって」
「目がマジなんだよ……けっこうしっかり痛えし……」
こうちゃんとアキくんは、息ピッタリというのかな。
いつもこんなふうにしょうもないことでじゃれあってばかりいて、それはきっと本当に仲が良い証拠で。
正反対に見えても、だからこそうまくいく関係というのもあるんだろう。
男の子どうしっていいな。
女子には介入できない独特の空気感があるよ。
「切り分ける前にローソク立てるからちょっと待ってね!」
丸いままのケーキにフォークを刺そうとしているこうちゃんを制止すると、すでに眠たそうな目が、不満そうにこっちを向いた。
「そんなのべつにいい」
「だめですー。用意したからにはちゃんとやりたいのっ」
ちゃんとローソクもかわいいのを探して買ったんだから。
ちなみにライターは、幾度目かの禁煙に挑戦中のお父さんのを拝借してきた。



