「はい、じゃあ洸介くんにはこれ。甘党だって聞いたからキャラメルのやつね」
みちるちゃんはひとりひとつずつチロリチョコをあげていた。
こういう軽くてフランクなとこ、本当に“らしい”な。
「なー、マジでこれだけ? ウソだろ?」
苺味を手のひらにころんと載せたままのアキくんが、泣きそうな顔で笑っている。
「あんたがいちばん多く貰ってんでしょ? よくそんな贅沢なことが言えるねえ」
「だってオレはみちるさんのチョコがいちばん楽しみだったんだよ」
あんまり堂々と言うから、思わずさらっと聞き流してしまうところだった。
アキくんって本当になにも包み隠さない。
両隣の弟と親友がビミョーな顔をしているよ。
それでもなんだかアキくんとみちるちゃんってすごくお似合いな気がして、できればふたりがどうにかなっちゃいますようにって、誰にも秘密で願ってしまった。
こうちゃんにも、秘密。
「こうちゃん、きょうも楽しみにしてるね。がんばってね」
「ん、季沙は潰されないように」
こうちゃんは、本当に変わらないね。
誰かにものすごい熱量で好きだと言われても、レコード会社からCDを出しても、いつか大きな会場でワンマンライブをやっても、もしかしたらテレビに映ってしまっても、きっとこうちゃんはずっと変わらないまま、なんでもなさそうに、黙ってチョコを食べているんだろうね。
「ね、帰ったらお疲れさまの会しようね」
みんなに聞こえないように、内緒話をするみたいに顔を近づけて。
あったかいカフェオレを2杯いれるから、これまで忙しかった分だけ、今夜はいっしょにゆっくりしよう。
わたしにできることなんてほんのささいな、ちっぽけななにかでしかないのかもしれないけど。
それでもわたしだってみんなを、こうちゃんを応援しているうちの、ひとりなんだよ。



