「ありがとう。また会えて嬉しいです」
熱い握手を受け、高級チョコとプレゼントまで貰っておきながら、トシくんはいつも通りの笑顔と、いたって穏やかな受け答え。
「覚えててくれたんですかっ?」
「そりゃ覚えてるでしょ。アキの友達でエンジョの“エミリちゃん”ですよね」
憧れの人から呼ばれる自分の名前というのはものすごい破壊力があるらしい。
彼女はとうとう語彙を失い、むしろトシくんと話していることすら辛いのか、胸に手を当ててすーはーと深呼吸をくり返している。
「あの、俊明さんがいちばん好きです……!」
我慢できず盛大に気持ちを吐露した彼女にはさすがのトシくんも少し驚いた様子だったけど、すぐに困ったふうに笑うと、ありがとうございます、とちょっとだけ照れくさそうに言った。
衣美梨ちゃんはそのあと残り3人にもいかに大ファンなのかということを伝えつつ、ガッチリ固い握手を交わしながら、高級チョコをしっかりと手渡していった。
アキくんには「オレら友達じゃねえの?」と笑われていた。
これまでなんとなくの感覚でしかなかった、あまいたまごやきを熱烈に応援してくれる誰かが本当に存在しているという事実。
それをこんなにも実感できたのははじめてで、すごくすごく、うれしかったよ。
こうちゃんのところまでたどり着いてそう伝えたら、ウンっていつものシンプルな返事。
ちなみにきょうも握手はしてくれなかった。
そのかわりチョコを請求された。
なんで俺にだけないのって、あのでっかいガトーショコラをひとりじめしておいてよくそんなふうにすねられるよね!
本当に信じらんない。



