「優希ちゃん……」

 春陽がそっと優希の肩に触れる。

「僕と春陽もそう思います」

 奏太は優希にそっと微笑む。

「だから私はこの扇子を手放したりしません」

 大きさが戻った扇子を閉じて両手で包みながら、優希は治臣に笑った。
 笑顔を向けられた彼は目を見開いた後にふっと声をもらし、寂しそうに笑い返す。

「それがあなたの答えなんですね」

 治臣は自分の視界が歪むのを感じたのだった。