涼音は口をあんぐり開けた。
何故だか流れで苗字を訊いていなかったが、フルネームを訊けばその名には思い当たる人がいた。
若月麗音。
高河中バスケ部、二年エース。
恵まれた容姿と天才的な運動能力で、女子の間では話題に上る男子だ。
通称レオ様。
~~何で今の今まで気づかなかった……!
涼音も確かに、話題のレオ様の試合を見たことはあるはずなのだが――夜闇に紛れている今のレオを、はっきり認識していなかった。
そんな余裕もなかった。
「ごめん、私あなたのこと、噂程度だけど知ってた」
片手をあげ、正々堂々謝る涼音。
麗音は意味がわからないようで首を傾げるだけだ。



