漢字まで頭に浮かぶ名前だった。 若月あお――空緒。 涼音が反応出来ないでいると、蒼井――空緒は、困ったように首を微かに傾けた。 「……やっぱり、あなたが弟の友達の涼音さんですよね。 ……麗音から僕のこと、聞いていましたか?」 弟。 麗音が、弟。ではこの人は本当に―― 「……麗音の、お兄さんの空緒さん、ですか?」 「……はい」 儚げに微笑む空緒。 ……身体の弱い兄。