『兄貴だって、いい気はしないはずだ。俺が本家にいるのは、兄貴が死んだときのためなんだから。

……俺は兄貴とって、そんな未来なんだと思う。兄貴の命が終わった未来。

……それが同じ家の中で暮らしていて、どうして邪険にしなかったのか、すげー不思議』
 



電話で話している時の麗音の言葉だ。
 



冷たい家の中で一人だけ、『麗音』と呼び、弟として可愛がり、存在を認めて来た。




(お兄さんも麗音も、辛いんじゃないかな……)
 



どちらも痛みはあるはずだ。




(……でも、やっぱり)