光子が杏奈の肩をたたき、こっそりウィンクしてきた。

私が勇吾のことが好きだから、がんばってって意味なんだ………。

それに気付いた杏奈は、赤面した。

まだ、高揚感が残っているらしく、勇吾はイスに座ったままだ。
杏奈は、それを見守っていた。

どれくらい経っただろう。

「そろそろ帰るか……」

勇吾がつぶやいた。
どうやら気分も、元に戻ったようなので、杏奈はほっとする。

「うん、じゃあね」

杏奈がそう言うと、勇吾は照れくさそうに頭をかいた。

「……久しぶりに一緒に帰るか? どうせ、同じ帰り道だし」

え……。
勇吾の言葉が何度も頭で再生される。
それとともに、じんわりとした喜びが心に広がった。

勇吾が一緒に帰ろうと言ってくれた。うれしくて、たまらず、杏奈はにやけていた。

「なんだよ、その顔は」

おかしそうに笑う勇吾と共に、杏奈は教室を出た。